タイ駐在チャンネル

動画のインタビュー企画で登場回数が多いのは…スカイくん

ディアライフのYouTubeチャンネル「タイ駐在チャンネル」内では、国籍問わずタイ国内にいる「おもしろい人」を取りあげているインタビュー企画がある。
タイ人に関しては筆者(動画のインタビュアー)の知り合いからまずアポイントを取り、その後その人の紹介などで続いてきている。
そのため、画面に何度か同じ人物が映ることもしばしば。
その中で脇役として出てきた幼稚園児、スカイくんが一番登場回数が多かったりする。

スカイくんの家庭環境は複雑なようでタイではあるある

スカイくんが最初に登場したのは、配車アプリ『Grab』(グラブ)の女性運転手ギックさんの回だ。
ギックさんの息子で、その際に進学のことや英語を学ばせたいことをギックさんから聞いていた。

この動画の中でギックさんの夫ボールさんが寝室で毛布をかぶって寝たままだった。
それに対し「旦那さん寝てたけど、何の仕事してるんだろう!?」というコメントがついていた。
取材が週末の午前中だったので、休みの日で寝ていたかっただけではあるが、そういうところも興味をひくのかと知った。
そこで、なにかインタビューできないかとギックさんに連絡したら、なんと離婚していたのであった。
撮影から2か月くらいのこと。急転直下だったので、再び同企画でボールさんの住むアパートを訪ねた。

ちょうどギックさんがスカイくんをボールさんに会わせる日だったので、撮影中は終始気まずかった。
ギックさんとボールさんは10歳差の夫婦だった。ギックさんが年上だ。
どちらかというとボールさんが押され気味の関係で、実はこれまでも壮絶なケンカのうえ、ボールさんが家を飛び出すことが何度もあった。
そのたびに仲直りをしていたものの、今回はついに離婚となったのである。
スカイくんが最後に登場したのはモンさんの回。
モンさんはギックさんの母親だ。
いつもはバンコク郊外のギックさん宅で一緒に暮らす。
ボールさんも妻の家に入っていたわけだが、特にタイ東北部では結婚すると夫が妻の家で暮らすことは普通で、あの家でギックさん家族、モンさん、それからギックさんの妹と暮らしていた。
女性3人の家、しかもギックさんの妹でさえ年上の中で生活していた窮屈さは想像に難くない。
いや、もしかしたらタイ人にはあたりまえだから、そうでもなかった可能性もある。
タイでは離婚もよくあることだ。
かつてバンコクの高校生インタビューで聞いたのは、クラスの半分以上が親の離婚を経験しているというので、スカイくんの立場もタイでは「普通」といえ、それほど悲しいことでもないのかもしれない。

モンさんはスカイくんを連れて田舎に帰りたい

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モンさんの動画を撮影した時期は10月だった。
タイの学校は2期制なので、前期後期の間がちょうど10月。
ほとんどの学校がこの月の半分以上もの長期休暇に入る。
モンさんはその間にナコンラチャシマーの家(ギックさんにとっての実家)にスカイくんを連れて帰っていた。
ナコンラチャシマーは東北部にある、タイで最も広い県だ。
モンさんの田舎は県庁所在地から80キロほど離れた農村。
80キロというと、ディアライフなどがあるBTSプロンポン駅辺りからアユタヤくらいと同じ距離だ。
タイでは子どもを親に預けて外に働きに出る人がよくいるが、モンさんは逆に親が上京して孫をみている。
夫とも死別しているし、ボールさんは北部出身なので、初孫を自分の手元に置くには双方の家族の思いを考えてモンさんがバンコクに来たほうがいいと考えたのだろう。
しかし、ギックさんもボールさんも決して稼ぎがいいとはいえない。
そこで、モンさんもそろそろ田舎に引っ込みたいという気持ちもあって、スカイくんを連れて長期休み中に帰郷しつつ、スカイくんもそのまま実家でふたり暮らしにしようとした。
生活費も安いし、教育にかかる費用もバンコクとは全然違うのだそうだ。
ここからは動画の後日談。
年が明けた2025年3月現在、結局スカイくんとモンさんはバンコクのギックさんの家にいる。
生まれてからずっと母親といたし、バンコクに友だちもいたのでつまらなくなったらしく、スカイくんがやや荒れてしまったらしい。
それで、しばらくはバンコクだろう、と決断したそうだ。

モンさんは10年くらいまえに建てた家だというが…

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動画内でモンさんは「(田舎の)家は10年以上まえに建てた」と発言しているが、実際には違う。
上の画像を見てもらうとわかる。
これは2013年のモンさんの家だ。
動画とも違うし、画像も新築に見えない。
間違いなく20年は経っている。
よくタイ人は5年まえ、10年まえがごちゃごちゃになっていることがある。
長く住むとわかってくるが、たしかにわからなくなる。
日本は四季があったり、ファッションの流行など、なにかと紐づけて憶えていられる。
タイは年中暑いし、流行も日本ほど大きなトレンドがないので、紐づけて憶えておくものがほとんどない。
だから、在住日本人でも長い人ほど過去の話がテキトーだったりする。
さて、筆者がなぜこの家が20年まえには建っていることを知っているかというと、実はモンさんは筆者の親戚であるからだ。
正確には筆者のタイ人妻の叔母である。
妻と知り合ったのが20年まえで、そのころに訪れたときにはすでにこの家はあった。
モンさんの夫、つまりギックさんの実父は日本で働いていた。
当時はまだ日本への出稼ぎが人気だった時代。
実父は栃木で小売店をやっていたと聞いている。
その時点で10年以上タイに一度も帰ってきておらず、稼いだお金をモンさんに送り続け、そして家が建った。
まあ、10年以上、一度もタイに帰ってこなかった理由は察してください。
正確には帰ったらもう日本へは…という立場だったらしいので…。

東北部の農村ではわりとモダンなタイプの家だった

タイ東北部は県庁所在地以外は農村ばかり。
この地域の住宅形態というと木造の高床式が多い。
今でこそコンクリートで造ったり、木造でも今風な家が増えてきているが、20年まえはモンさんの家のスタイルはかなり珍しかった。
ただ、高床式は本来東北部の気候によく合った造りだ。
1階を塞ぐことで風通しが悪くなり、動画のようにモンさんの家も2階が使えなくなってしまっている。
今、東北部の農村ではこのように2階を使わなくなった家屋が増えてしまっている。
不動産ネットワークの広いディアライフといえども、さすがにナコンラチャシマーの物件は扱っていない。
筆者は妻の田舎が好きで、いつかは住みたいという思いもなくはない。日中も静かで、空気も澄んでいる。
しかし、仕事を考えると難しいのも現実。
ディアライフで扱っているような現代的で優れた部屋に住みつつ、年に1、2回ほどこういう田舎ステイがちょうどいいのだろうか。

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