タイは極端な格差社会で、1日1億円を平気で使える人もいれば、500円に苦しむ人もいる。問題は後者のほうが多いことだ。今回インタビューをしたソムさんも中間層には入るものの、努力でなんとか今を維持している状況だ。ソムさんの話は中間層が抱える社会的な問題点、タイ人の前向きさなどを垣間見ることのできる、実は重要なインタビューだったと思っている。
住まいは一見アパートだけれどもちゃんとした分譲マンション
ソムさんの自宅は、オンヌット通りの真ん中くらいにある。一見、アパートのように見えるが、分譲コンドミニアムとして何十年もまえに販売された。当時伯母が購入したものを数年まえにソムさんが買い取り、ローンもソムさん名義に変更している。
ローンは月々数千バーツ程度、共益費はあってないようなもの。そのため、修繕などはほとんど行われず、外観はまるで空爆にあったかのようなひどさだ。昔ながらのタイの建築物といった雰囲気があって、決してそれが悪いというわけではないが。古い設計であるため、スタジオタイプの部屋も窮屈な感じはしない。
昔ながらの設計なので、1階は飲食店や美容院などができる設計になっている。しかし、ほとんどが未入居か住居になっているので、買いものなどが今はほぼできない。ただ、近くにコンビニエンスストアがあるので、利便性は悪くない。
オンヌットの真ん中から先はまだ未開発といえるような、昔ながらのバンコクの風景を残している。そのため、上層階にあるソムさんの部屋のベランダからの風景は広々としていた。
よりよい収入を求める中間層
タイやベトナムの若い人、特に中間層の人は給与相場をよく知っているし、日常の話題によく出てくる。たとえば外国系でもどの国なら平均はどれくらい、英語が話せるといくらくらい、具体的に○○社はいくらといった具合だ。
ソムさんもその口で、どこで働くとどういった給料になるかがわかっている。インタビュー時はPR要員だった。タイでは商業施設やスーパーで新商品の紹介をする女性などを見かけるが、あれらはPR専門の派遣会社があり、各地に派遣されている。ソムさんもそこに登録するが、結局不定期にしか仕事がないので収入が安定しない。
そのまえはカフェで働いていた。ただ、ちょっとしたことがあってその店を去ったが、その店から戻ってくるようにお願いされ、現在(執筆時)はスワナプーム国際空港のカフェでマネージャーをしている。
ソムさんは経験から学歴や職務経験が給与アップには必要であることがわかって、働きながら大学を卒業し、仕事もひとつひとつ憶えて信頼を獲得。そうして、職場の管理をする立場にまで登りつめた。高校を卒業して働きはじめたバーガーショップと比較したら、給料はかなりあがったといえる。
格差社会のタイでは諦めず、自分に足りない部分をひとつひとつ補っていくことで上に登ることはできる。もちろん、格差の上のほうにいる富裕層などは絶大な権力も握っているので、それを超えることは難しい。それがわかっていて最初から諦めている若者もいるが、ソムさんのようにできる中で最善を尽くすことで、自身の人生を変えることも不可能ではない。
転売は難しいかもしれない

ソムさんの所有する物件は、先述のとおりオンヌット通りにある。BTSオンヌット駅がスクムビット通り沿いにあり、オンヌット通りも商業施設がいくつかあるし、商店や飲食店も無数にある。そのため、利便性は高く、近年は日本人の居住者も増加している。
駅前もまた開発され、15年まえと比較しても随分と都会的な雰囲気になった。ソムさん宅のベランダからはちょうど駅のほうが見える。ずっと向こうまで低い家や緑が広がり、その先にオンヌット駅近辺の高層コンドミニアム群がそびえていて、ちょっとした夜景を構成する。
とはいえ、それは駅前の話。ソムさんの自宅近辺は静かな住宅街で、バンコクとは思えない雰囲気があって、一見落ち着いている。その辺りからだとバイクタクシーで駅までも10分もかからないし、タクシーやバスも走っている。しかし、やはり場所柄の相場が安く、ディアライフで扱う投資用の分譲物件のような運用は正直望めない。
自分で暮らす分には問題はないが、それもタイミングを計っておかないと、転売も難しいだろう。ソムさんの住む建物はかなり古い。建て替えもできないので、老朽化で強制退去になる可能性もこの先出てこないとは限らない。
もし投資用、あるいは老後に自分で住むように物件を考えているなら、ある程度値が張るものの、管理や修繕を常に行っていくようなちゃんとした物件を選ぶべきだろう。その点でいうと、ディアライフが取り扱う分譲物件なら安心だ。
無理に高望みをしないことで確実に幸せを手にする
タイ人は現実的な性格をしていると常々思う。たとえば宝くじも1等を望んでいる人がほぼおらず、下2ケタ3ケタのせいぜい数百バーツ程度のリターンを狙っている人が大半だ。
ソムさんも気質的にはそういう感じだと思う。できる限り給料の高い職場に転職をいつも考えているとはいえ、無理に給与が高いけれども自分の能力を超えた外資のようなところを望んでいない。同時に、ただいい求人に飛びつくのではなく、ひとつひとつステップをあがりながらスキルを磨き、それに見合った職場に行く。
ディライフもほんの10年15年まえまでは今ほど大きな会社ではなかった。ひとつずつ着実に、誠実に働いた先に成功があるのかもしれない。ソムさんもタイ女性らしく落ち着いて自己分析をして、昨日より先に進んでいる今日の自分を噛みしめている。